徳島・阿南市加茂谷で愛され続けた【和み工房 しげぱん】さんが、今年5月末でお店を閉じることになりました。地域の人に愛されて力強く地域に根差してきたパン屋さんのストーリーには、たくさんの感謝と希望が詰まっています。

毎週火曜日 阿南市役所1階市民フォーラムでパンの販売出店されている『和み工房しげぱん』さん

地元に愛され、かけぬけた9年間

14年前に阿南市に移住して、9年前から始まった店舗販売は、早朝3時から始まる仕込み、そしてパンの焼ける香りとともに始まる日々だったそうです。

みんなの想いの詰まった手作りの店舗も年数がたち、老朽化もすすみ、様々な事象が重なり自らを省みたとき、
「このまま10年後パン屋さんを続けているのを想像して、ちょっと厳しいなと思ったんです。」
日の出に起きてご飯を食べて仕事をしてと、健康や家族との時間も大切にしたいという想いもあり、今回の決断に至ったそうです。

「そう、やりきったんです。」

その言葉からは、満足感と充実した気持ちがにじんでいました。

終わりじゃない。“第2章”のはじまりです。

店舗を閉めることは、あくまで「一つの区切り」。
『良い意味で次のスタートを切るために一回手放すという感じなんです。』と。
しげぱんさんのまなざしは、すでに次のフィールド──地域農業へと向かっています。

地元・加茂谷で栽培されている徳島の名産「すだち」。
語ってくださったのは、高齢化と後継者不足が進む地元の農業に対しての熱い想いと、新しい働き方や農業への就労の仕組みなどに大きな関心を寄せられていました。

「加茂谷のすだちを守りたい。その想いは強いです。」

現在、徳島県産品の代表格であるすだちの生産に対して、行政のサポートはまだまだ進んでいないと感じているそうです。そんな中、同じ地元で世界各地から集まったボランティアの方による収穫などの新たな取り組みを行っているすだち農家の井出さんに共感し、学びを得ていきたいと考えているのだと。

素材を活かしたパン作りと販売で培った“生産力”と“つなぐ力”を、今度は農業の現場で「活かす」「つなぐ」ことに重きを置いた地域農業へと、和田さんの”第2章”がはじまります。

「好き」をカタチに、ゆるやかに広がる可能性

そして、市役所で出店販売してくれている和田さんの妻(奥さん)は、いつもにこやかに話してくれて、その人柄に惹かれてリピーターとなる方も多くいらっしゃいます。

2022年10月4日阿南市役所出店時

今後を聞いたところ、
「チャイが好き。甘酒も好き。だから露店で出してみるのも面白いと思っているんです」
「すだちスカッシュや発酵ジュースも面白いと思ってて…」
そう語る目は、まるで新しいレシピを考えるときのように、キラキラと輝いていました。
パンという形ではなくても、きっとまた新たな“おいしいもの”を通して地域と人とをつなげていってくれる、そんな可能性を垣間見ることができました。

パン屋というステージから次のステージへと進む和田さんが向き合うのは、地域にとって“なくてはならないもの”をどう守り、活かしていくか、という問い。

そしてそこには、まだ誰も手をつけていない可能性が、たくさん残っています。

2022年7月5日、阿南市で初の試みであり未知数の事業として始めたトライアル・サウンディングにご参加いただいた時の屈託のない笑顔が未だ鮮明に記憶されています。

トライアル・サウンディングで出店された際のインタビュー記事はこちらから

これから新たな形で地域とつながっていく和田さんとまたどこかで出会える日が来るかもしれません。

交わったご縁に感謝しつつ、心から伝えたい言葉は、
「またここでお会いできたら嬉しいです」

 2022年10月4日阿南市役所出店時

『和み工房しげぱん』さんの阿南市役所での出店販売は、5月13日(火)、5月20日(火)、5月27日(火)が最終となります。加茂谷で地域の人に愛されて力強く地域に根差してきたパン屋さんの味をぜひともご賞味ください。

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