アトラス彗星 (C/2019 Y4)

ネットや天文雑誌などで2020年5月頃に肉眼でも見える大彗星になるのでは?!と噂されていたアトラス彗星 (C/2019 Y4)。残念ではありますが、4月に入ってから彗星の核が分裂し、崩壊の一途をたどっているようです【参考】。以下、1枚目は3月20日夜にカラー撮影したアトラス彗星です。このときはまだ期待も大きく、核は分裂していませんでした。
2020年3月20日25時11分頃 (JST) 撮影。カメラ: EOS kiss Digital X7i (ISO 6400)。露出時間: 60s x15。撮影者: K. Imamura 【無地画像はこちら
2枚目の写真は(モノクロ撮影)、4月14日に撮影したアトラス彗星です。彗星らしい尾も出ていますが、よく見ると核から分裂したと思われる破片らしきものが、少なくとも3つは写っていそうです。もし肉眼でも見えるような大彗星になっていたら、昨今の「ステイ・ホーム」な日々に驚きや感動を与えてくれたかもしれませんね。一方で人間の予想に反する天体たちの振る舞いは、天文学の醍醐味ともいえます。アトラス彗星の崩壊はそんな天文学の純粋な面白さを振り返らせてくれているのではないでしょうか。これからどのようにバラバラに崩壊していくのか、天文学者も注目していることでしょう。
2020年4月14日21時27分頃撮影。冷却CCDカメラ “STX-16803E” 使用 (CCD no-filter)。露光時間: 60sec x 33 (3×3 binning)。撮影者: K. Imamura 【無地画像はこちら

いってらっしゃい!水星探査機ベピコロンボ (みお)

2020年4月10日に日本時間 19:46~19:50頃に撮影 (K. Imamura)。露出時間1秒で撮った計34フレームをGIFアニメ化。望遠鏡は四国最大の口径 113cm (F9.8)、カメラは冷却CCD “STX-16803E (SBIG)”。撮影時は南の空(ろくぶんぎ座)、約50°の高さに位置していた。FOV = 約11′.5 x 11′.5。

ちかごろ新型コロナウィルスに関連して多くの方々が心身ともにお疲れではないでしょうか。そんなきたる4月10日、宇宙では太陽に最も近い惑星「水星」への旅路が本格化し、様々な人たちの宇宙への思いが加速しています。

さて今回とりあげる、水星探査機ベピコロンボは2018年10月20日に打ち上げられ、約7年もかけて水星を目指します。その間、探査機はスイングバイと呼ばれる技術を駆使するのですが、これは惑星の重力を利用して探査機の向きや速度を変える技術で、ベピコロンボは計9回ものスイングバイを行う予定です(地球1回、金星2回、水星6回)。なおベピコロンボはヨーロッパ宇宙機関 (ESA) と 日本の JAXA が協力して進めている惑星探査計画です。ベピコロンボは水星に到着すると2つに分離し、ヨーロッパチームと日本チームがそれぞれ開発した探査機が水星のことをくまなく観測するようです。日本側の探査機は「みお」と呼ばれ、JAXA が行った一般公募で名付けられました。

今回、ベピコロンボは4月10日に地球で初スイングバイを行うため、一度地球にググっと近づくことになります。そうすると大きな望遠鏡を使えば探査機の光を観測できる可能性があり、日本公開天文台協会“【「みお」を、みおくろう!】ベピコロンボ地球スイングバイ観測キャンペーン” を立ち上げ、阿南市科学センターもこれに参加表明し、4月10日の夜に四国最大の望遠鏡 (口径113cm) で観測する運びとなりました。

当館では10日19時頃から観測スタンバイし、ベピコロンボの通過予測されている空域(南の空約50°の高さ)に望遠鏡を向け、待ち伏せするような形で観測にのぞみました。すると19:30頃には予想域にベピコロンボの光点を捉え、約1時間にわたって観測を行うことができました。冒頭のGIFアニメーションは 19:46~19:50 頃に観測したものです。このとき、ベピコロンボは観測地から約12万km離れたところに位置していたものと考えられます。これから地球を遠く離れ、まずは金星方面に向かい、今年の10月15日と来年8月11日には金星でスイングバイが行われ、そして水星圏へ。この探査機はもう地球に帰ってくることはありませんので、今回の観測で得られたベピコロンボの輝きは、(一般の方も含め)地上から確認できる最後の光だったと言えるでしょう。なんだか寂しい気もしますが、2025年以降はまだ誰も知らない水星の真実を私たちに届けてくれるはずです。コロナウィルスで疲れた日々に、宇宙への思いが少しでも皆さんに癒しを与えてくれることを筆者は願っています。

【参考資料】
BepiColombo 地球スイングバイ観測キャンペーン(日本惑星協会)
「みおを、みおくろう」地球スイングバイ観測キャンペーン(日本公開天文台協会)
水星磁気圏探査機みお(JAXA)

【報道関係の皆様へ】
以下に今回の観測で得られた静止画と、冒頭とは少しだけ異なる空域で捉えたGIFアニメーションの画像を置いています(静止画はクリックするとフルサイズ)。報道機関がこれらの画像を利用する場合は、一度阿南市科学センターまでご連絡ください(TEL: 0884-42-1600)。GIFアニメのフルサイズ(2000×2000)のご要望がある場合も、お手数ですが当館までご相談ください。

2020年4月10日20時1分41秒に撮影したベピコロンボ(みお)。露光時間1秒。明るさは約12~13等で観測された。撮影者: K. Imamura【無地画像はこちら

 

2020年4月10日20時21分59秒に撮影したベピコロンボ(みお)。露光時間120秒。探査機は移動しているため、ここでは軌跡となって線状に写っている。撮影者: K. Imamura【無地画像はこちら

 

2020年4月10日 19:32~19:36 頃 (日本時間)。露出時間1秒で撮った計31フレームをGIFアニメ化。撮影者: K. Imamura

 

2020年4月10日 19:39~19:44 頃 (日本時間)。露出時間1秒で撮った計33フレームをGIFアニメ化。撮影者: K. Imamura

 

2020年4月10日 19:52~19:57 頃 (日本時間)。露出時間1秒で撮った計35フレームをGIFアニメ化。撮影者: K. Imamura

 

2020年4月10日 19:59~20:04 頃 (日本時間)。露出時間1秒で撮った計35フレームをGIFアニメ化。撮影者: K. Imamura

 

2020年4月10日 20:06~20:11 頃 (日本時間)。露出時間1秒で撮った計37フレームをGIFアニメ化。撮影者: K. Imamura


【追記 / 2020年4月15日】

阿南市科学センターでは4月14日の晩に、ベピコロンボの追跡観測を行いました。明るさは約18等台と暗かったですが、順調に地球を離れていることがわかります。4月10日から明るさは約1/240となり、10日夜時点で観測地から探査機までの距離は約12万kmでしたが、14日夜には約150万kmに達していると考えられます。水星までの長い道のりはまだまだ始まったばかり。ほんとうに気をつけていってらっしゃ~い!

2020年4月14日20時32分頃に撮影したベピコロンボ(みお)。露光時間60秒 (CCD no-filter)。測光値(mag): 18.34±0.16 (Reference catalog: Gaia DR2 RP magnitude)。観測者: K. Imamura【無地画像はこちら

 

徳島の天体捜索家 約1年ぶりに新彗星を発見!

【今回発見された新彗星】撮影: 阿南市科学センター (口径 113cm 望遠鏡 F9.7 + 冷却CCDカメラ STX-16803E). 撮影日: 2020年1月15日午前5時54分頃. 彗星特有の淡い輝きが見られる. 【無地版の画像はこちら

2020年、新年早々素晴らしい天文ニュースが舞い込んできました。徳島の天体捜索家である岩本雅之さん (阿波市) が、約1年ぶりに新しい彗星を独立発見されました!岩本さんは2018年11月と12月にも立て続けに新彗星を発見されたこともあり (参考 [1], [2]) 、記憶に新しい方もいるのではないでしょうか。今回の発見で岩本さんは2013年3月の発見と併せて、通算4つの彗星を発見したことになります(うち独立発見は3つ!)。

岩本さんは2020年1月9日の未明5時38分頃、東の低空へびつかい座の領域を撮影した2枚の画像に、彗星らしき天体が微かに写っていることに気がつきました。これを受け、岩本さんは10日の未明にも追跡観測を行いましたが、月明かりの影響などで追跡が難しい状況にありました。彗星などの新天体の発見(確定)は、追跡観測を行うことで本当に新彗星かどうかの判断が必要となります。一方で岩本さんは国立天文台などに観測の報告を行いましたが、日本では天候不良などが重なり、追跡観測の報告は数日無いままでした。なお、阿南市科学センターにも岩本さんから同月11日に追跡観測の依頼があり、連日観測を試みましたが、雲が多くてなかなか観測が行えませんでした。もし本当に彗星であるなら、夜空(星座の中)を移動していくため、場合によっては行方不明になってしまうこともあります。

そのような中、1月13日にクリミアの G. ボリゾフ 氏によって、新彗星を独立に発見したという報告がなされました。驚くべきことに、実はこの彗星こそが岩本さんの発見した新彗星だったのです。さらに日本でも14日未明には複数の観測者がこの彗星の追跡観測に成功し、これまで不確かだった軌道や予報位置が正確に求められるようになりました。そして14日頃(日本時)、アメリカの天文電報中央局は岩本さんによる新彗星の発見が確実であるとして、正式に世界に向けて公表しました (参考: CBET 4714)。日本語では国立天文台も報じています。

そして、阿南市科学センターでも15日未明にやっと天候に恵まれ、岩本さんの新彗星の姿を撮影することができました(冒頭の写真)。当館の観測データは国際天文学連合の小惑星センター (MPC) に報告しています。観測データは彗星の軌道をより正確に計算する上で重要な情報となります。まだこの彗星には仮符号や名前が与えられていませんので、今後、世界中から観測データが集まってくれば正式に Iwamoto 彗星と命名されるのではないかと思われます。

なお現在、この彗星の明るさは12等台と暗いため中型以上の望遠鏡やカメラが無いと観測が難しいですが、徳島県からまた新彗星が発見されたことは大変嬉しいニュースです。以前もこの blog に書いた通り、近年彗星の発見はアマチュア観測家には厳しい時代にあります。世界中の大学や研究機関によってロボット望遠鏡による大規模な夜空の監視が自動で行われているからです。そういった中、一般の方が持てる観測機材で新彗星を発見し続けることは驚くべき快挙です。もちろんその背景には、岩本さんの卓越した観測技術に加え、日々の観測努力と並々ならぬ情熱があってこそ。

岩本さんの発見は、天文学の発展に寄与するとともに、アマチュア観測家が彗星を発見して自分の名前をつける、そんな夢をまた見させてくれる大変な偉業ではないでしょうか。

約5年ぶり!日本人による彗星発見

【今回発見された新彗星】撮影: 阿南市科学センター (25cm 屈折 F8.9 + EOS kiss Digital X7i). 撮影日: 2018年11月11日午前5時頃. 彗星特有の尾も見られる。

秋も深まる11月。そんな中、二人の日本人が独立で新たな彗星を発見をされました!日本人による彗星の発見は約5年ぶりです。

香川県観音寺市の藤川繁久さんと、徳島県阿波市の岩本雅之さんは、それぞれ独立に11月8日の明け方、東の空(おとめ座)で約10等台の新天体に気が付き、国立天文台に報告されました。その情報は、国際天文学連合の天文電報中央局などを通じて世界中に広く発信され、国内外の観測者によって追跡観測がなされ、新彗星発見として広く知れ渡りました(CBET 4569 / NEW COMET = TCP J12192806-0211143, 国立天文台トピックス)。なおこの天体はアメリカ・カリフォルニア州の D. E. マックホルツさんも独立に発見しています。この3名の発見時刻(観測時刻)は以下のとおりです。

発見日時(世界時間) 発見日時(日本時間) 観測者
7日12時43分頃 7日21時43分頃 マックホルツ氏
7日19時44分頃 8日04時44分頃 藤川氏
7日20時11分頃 8日05時11分頃 岩本氏

日本人による彗星発見は、2013年3月に岩本雅之さんが発見された Iwamoto 彗星 (C/2013 E2) 以来となり、約5年ぶりです。さらに、藤川繁久さんは過去7回(2002, 1988, 1983, 1978, 1975, 1970, 1969年)にわたって彗星を発見されており、うち6つの彗星にご自身のお名前が命名されています(他の独立発見者の名を含むものもあり / 参考資料: 国立天文台「日本人が発見した彗星一覧」)。

今後、この彗星には国際天文学連合によって仮の名前 (仮符号) が付与されます。さらに追跡観測などの情報が整理されていけば、発見者のお名前がこの彗星の正式な名称になるかもしれません。

ところで、近年アマチュア観測家による彗星の発見は難しい状況にあります。その背景には世界中の大学や研究機関によって、ロボット望遠鏡による大規模な夜空の監視が自動で効率的に行われるようになったからです。それによって、アマチュア観測家が持てる観測機材などでは太刀打ちしずらい時代となりました。そのような時代だからこそ、今回の彗星発見は、世界中の天文ファン・研究者を驚かせ、そして彗星発見に情熱を注ぐ人々に勇気を与えたことでしょう。

なお、阿南市科学センターでは11月11日明け方にこの彗星の観測を同施設の大型望遠鏡 (口径 113cm 望遠鏡) で行いました。観測によって得られたデータはこの彗星の正確な軌道を計算するための貴重なデータの一つになるため、近く国際天文学連合の天文電報中央局に報告する予定です。

【追記: 11/12】

この彗星に、Machholz-Fujikawa-Iwamoto 彗星 (C/2018 V1) という名前が無事命名されました!(CBET 4572). 発見者の方々、本当におめでとうございます!

宇宙の日記念イベント2018

2018年も『宇宙の日』を記念したイベントを9月24日(月)に科学センターで行いました。これに合わせて応募を募っていた作文・絵画コンクールについても、市内外から多くの応募があり、計17点の作品が阿南市科学センター賞として見事入選しました(テーマは「太陽系探査隊」)。ブログでは最優秀作品(絵画)2点をご紹介しておきます。

絵画の部・中学生部門 最優秀賞/大橋 歩実 (羽ノ浦中学校3年生)

 

絵画の部・小学生部門 最優秀賞/吉川 ひより (平島小学校4年生)

なお、当日のイベントはコンクールの表彰式に加えて特別講演会を行い、講師として日本スペースガード協会の二村徳宏 博士をお招きしました。講演は「中秋の 鳴門の渦潮が 鳴くときに; 月の科学」というテーマで、月の基本的なこと、鳴門の渦潮のメカニズム、月探査衛星かぐやの成果など、最新の話題もとりいれつつ、とてもわかりやすくお話をして頂きました。

ところで、講演会後に予定していた「中秋の名月観望会」は雲が多い中での観察となりましたが、最後まで残っていたお客様には望遠鏡でお月見をお楽しみ頂くことができました。

年末年始はミラを見てみよう!

2018年1月中旬21時頃の夜空(1月上旬であれば22時頃).くじら座のミラはどこに見えるかな?【作図: 阿南市科学センター】

くじら座といえば秋の代表的な星座の一つですが、冬場でも夜の早い時間帯であれば確認することができます。今回はこの星座で輝くミラという星に焦点をあててみることにしましょう。

ミラという名前は「不思議な」という意味があります。いったい何が不思議なのかというと、実は星の明るさが変化するのです。ミラは明るいときは2~3等星くらいで見えているのに、暗いときはなんと9~10等星くらいまで減光するため、肉眼では完全に見えなくなってしまいます。このような現象が起こることを初めて観測したのが、ファブリチウスという天文学者でした(16世紀後半)。なお、こういった明るさの変わる星を天文の世界では変光星 (variable star) と呼び、ミラは変光の様子やメカニズムから脈動型変光星とも呼ばれています。

極大期と極小期のミラの様子.(撮影: 阿南市科学センター)

さて、このミラは約332日(約11カ月)という周期で変光しています。前回ミラの明るさが極大になったのは2017年2月中旬頃だったので、次は2018年1月中旬頃になると考えられます。筆者が双眼鏡で確認したところ、現在(2017年12月下旬頃)ミラの明るさは4等星くらいの明るさでした。そのため年末年始から1月中旬にかけて観察をすれば、ミラの明るさが日に日に増してくる様子を楽しむことができるでしょう。もし晴れた日に夜空を見上げる機会があれば、ミラの明るさが変化していく様を是非チェックしてみてください。

ちなみにミラの変光周期に従えば、2018年は12月頃にもミラの極大期があると考えられます。ちょっとマニアックかもしれませんが、このときはクリスマスとあわせてミラを楽しめるのではないでしょうか (^^/