【今回発見された新彗星】撮影: 阿南市科学センター (口径 113cm 望遠鏡 F9.7 + 冷却CCDカメラ STX-16803E). 撮影日: 2020年1月15日午前5時54分頃. 彗星特有の淡い輝きが見られる. 【無地版の画像はこちら

2020年、新年早々素晴らしい天文ニュースが舞い込んできました。徳島の天体捜索家である岩本雅之さん (阿波市) が、約1年ぶりに新しい彗星を独立発見されました!岩本さんは2018年11月と12月にも立て続けに新彗星を発見されたこともあり (参考 [1], [2]) 、記憶に新しい方もいるのではないでしょうか。今回の発見で岩本さんは2013年3月の発見と併せて、通算4つの彗星を発見したことになります(うち独立発見は3つ!)。

岩本さんは2020年1月9日の未明5時38分頃、東の低空へびつかい座の領域を撮影した2枚の画像に、彗星らしき天体が微かに写っていることに気がつきました。これを受け、岩本さんは10日の未明にも追跡観測を行いましたが、月明かりの影響などで追跡が難しい状況にありました。彗星などの新天体の発見(確定)は、追跡観測を行うことで本当に新彗星かどうかの判断が必要となります。一方で岩本さんは国立天文台などに観測の報告を行いましたが、日本では天候不良などが重なり、追跡観測の報告は数日無いままでした。なお、阿南市科学センターにも岩本さんから同月11日に追跡観測の依頼があり、連日観測を試みましたが、雲が多くてなかなか観測が行えませんでした。もし本当に彗星であるなら、夜空(星座の中)を移動していくため、場合によっては行方不明になってしまうこともあります。

そのような中、1月13日にクリミアの G. ボリゾフ 氏によって、新彗星を独立に発見したという報告がなされました。驚くべきことに、実はこの彗星こそが岩本さんの発見した新彗星だったのです。さらに日本でも14日未明には複数の観測者がこの彗星の追跡観測に成功し、これまで不確かだった軌道や予報位置が正確に求められるようになりました。そして14日頃(日本時)、アメリカの天文電報中央局は岩本さんによる新彗星の発見が確実であるとして、正式に世界に向けて公表しました (参考: CBET 4714)。日本語では国立天文台も報じています。

そして、阿南市科学センターでも15日未明にやっと天候に恵まれ、岩本さんの新彗星の姿を撮影することができました(冒頭の写真)。当館の観測データは国際天文学連合の小惑星センター (MPC) に報告しています。観測データは彗星の軌道をより正確に計算する上で重要な情報となります。まだこの彗星には仮符号や名前が与えられていませんので、今後、世界中から観測データが集まってくれば正式に Iwamoto 彗星と命名されるのではないかと思われます。

なお現在、この彗星の明るさは12等台と暗いため中型以上の望遠鏡やカメラが無いと観測が難しいですが、徳島県からまた新彗星が発見されたことは大変嬉しいニュースです。以前もこの blog に書いた通り、近年彗星の発見はアマチュア観測家には厳しい時代にあります。世界中の大学や研究機関によってロボット望遠鏡による大規模な夜空の監視が自動で行われているからです。そういった中、一般の方が持てる観測機材で新彗星を発見し続けることは驚くべき快挙です。もちろんその背景には、岩本さんの卓越した観測技術に加え、日々の観測努力と並々ならぬ情熱があってこそ。

岩本さんの発見は、天文学の発展に寄与するとともに、アマチュア観測家が彗星を発見して自分の名前をつける、そんな夢をまた見させてくれる大変な偉業ではないでしょうか。