
冬の夜空には1等星よりも明るい星が7つもあり、冬の乾燥して澄んだ空気と相まって大変煌びやかな空に見えます。このうちベテルギウス(オリオン座)、シリウス(おおいぬ座)、プロキオン(こいぬ座)の3つを結べば冬の大三角ができることは有名ですが、今回の話題はこの3つの中でも、全天で最も明るい星シリウスにスポットライトを当ててみます。
シリウスという名前の語源はギリシャ語のセイリオスからきているといわれ、日本語では「焼き焦がすもの」という意味があります。古代エジプトでは夏至の未明に太陽より先にシリウスが昇ってくることを利用し、豊穣をもたらすナイル川の氾濫の時期を予測していたそうです。そのためエジプトではソティス(水の上の星)と呼ばれていました。ちなみに中国では天狼(てんろう)、日本では青星(あおぼし)または大星(おおぼし)という名前で呼ばれ、シリウスは古来より世界各地で親しまれてきた星の一つです。

ところで、シリウスは口径の大きな望遠鏡でじっくり観察すると、上の写真のようにすぐ隣に暗い星が見えることがあります。この写真に写っている暗い星(約8等星)はシリウスBと呼ばれ、実はこの星とシリウスはお互いの周りを約50年の周期で公転する連星系(実視連星)であることが知られています。
シリウスB(伴星)の存在は1844年にドイツの天文学者ベッセルによって予言され、1862年にアメリカの望遠鏡製作家クラークによって実在することが確かめられました。なお主星であるシリウスの大きさは太陽の2倍近い大きさですが、伴星のシリウスBはなんと地球の2倍程度の大きさしかありません。この伴星の正体は白色矮星と呼ばれる種類の天体で、小さいながらも1ccの水が1トンにも達するような強烈な重力を持つ、とても高密度な天体だと考えられています。白色矮星は星の燃え尽きた芯のようなもので、太陽も最期は白色矮星へと進化していくだろうと予想されています。

さて、このシリウスBを自分の目で見るには幾つかの条件が必要です。シリウスBは上図のような軌道を描いているため、観察を行う場合は二つの星の間隔がなるべく離れているほうが見易くなります。主星と伴星が最も離れるのは2022年ごろと予想されていますが、2017年時点でも主星から十分離れているので、シリウスBの観測好機がしばらく続くといえるでしょう。
ただし、観察時にはなるべく高い分解能(ものを細かく見る力)を有する望遠鏡でないと観察が難しいため、必然的に口径の大きな望遠鏡が必要となります。加えて大気の状態(気流の流れ)が非常に安定していて、星像がとてもシャープに見えるときでないと観察は難しいかもしれません。もしかすると、科学センターの 113cm 望遠鏡を使えば、大気の状態次第で運が良ければ観望会中にシリウスBを見ることができるかもしれません☆
主な参考資料:
- Kaler, J. B., 2002, The Hundred Greatest Stars, Springer
- 野尻抱影, 1976, 「日本の星-星の方言集」, 中央公論新社
- Chandra X-ray Observatory’s webpage [link]
【追記】2021年2月にもシリウスBに関する記事を書きました。宜しければ併せてご覧ください☆