ここでは、スマート望遠鏡 (Seestar S50, S30, S30 Pro, DWARF3, DWARF mini) を使ったかんむり座T星 (以下、T CrB) の導入方法と、明るさのデータを得るための撮影方法についてご紹介します。観測データを撮るだけなら、一晩10分程度の短時間で実施できます。
このページは2024年5月に、Seestar S50ユーザー向けに公開しました。それをベースに S30, S30 Pro, DWARF3, DWARF mini 向けのユーザーもキャンペーンに参加できるよう、加筆・修正しました。【2026年5月15日記】
かんむり座はどこだ?【初心者向け】
Seestar や DWARF を使えば、とても簡単に天体の導入ができますが、観測をするときは是非、かんむり座が空のどのあたりで見えているのかを知っておくと良いでしょう。例えば、観測時に自宅のベランダや庭から見えるのか、建物が邪魔になっていないかなど、かんむり座の位置を事前に確かめておくと観測の効率が良くなります。
上図は図中左上に示す時期と時刻に観察することができる星空の様子です。空の暗い地域ではかんむり座の形が見えると思いますが、都会の空では探すのが難しいでしょう。そこで、おおよその位置として、うしかい座のアークトゥルスを目印にしてかんむり座の位置を把握すると良いでしょう(夏場はこと座のベガも目印になります)。
なお最近は便利な星図アプリもあります。スマホを空にかざせば星座の位置がだいたいわかります。例えば無料で使えるアプリとして以下のようなものがあります (リンクは全て iOS 版に繋がります)。
- 星座表 (iOS, Android)
- Star Walk (iOS, Android)
- Stellarium Mobile (iOS, Android)
- 星空ナビ (iOS, Android)
あと、任意の日付や時刻で、かんむり座の位置を調べたいときは、星座早見盤を使うことが最も簡単です。これは小学生が理科で学習する教材にもなっていますが、手元にあると意外に便利で、ササっと夜空の様子を調べることができます。Seestar や DWARF のお供に、1枚ご用意されてはいかがでしょうか。
【参考: 星座早見盤の工作用 PDF / 阿南市科学センター製】
※A4用紙に印刷すれば自作できます(厚紙だと尚良い)
T CrB を導入する方法
現在は Seestar, DWARF ともに天体検索で「T CrB」と打てばヒットするようになり、導入はとても簡単になりました (Seestar は図1, DWARF は図2を参照)。ただし、撮影された画像からどの星が T CrB なのかは、自分で確認(同定)する必要があります。引き続き、以下を参考にしてください。
Seestar は様々な天体リストを持っていますが、現状 T CrB のような変光星の導入用リストを持ち合わせていません。そのため、Seestar の天体リストに無いターゲットの導入には工夫が必要です(参考: 「天体リストに無い天体の導入(Seestar S50)」)。しかしご安心ください。幸いにも T CrB の近くに、IC4587 という銀河があり、これを Seestar の場合はアプリ内で検索して GoTo すると簡単に T CrB を導入することができます。初心者の方は以下の手順を参考に T CrB を導入してみましょう。
② 星図の右上にある虫眼鏡マークを押す
③ 検索窓に IC4587 と入力して検索する
④ IC4587 の導入ボタンを押す


【ポイント1】T CrB を同定するときは視野回転を意識しよう
なお、Seestar や DWARFは基本は経緯台式なので、撮影する時間や時期によって、視野が回転して写ります (※ただし赤道儀モードで撮れば、画像の上が常に北になります)。図3の例でいくと、この画像は図4のように天の北極が左上になっています。そのため、初めて T CrB を観測をしたとき、慣れないうちは「あれ?このホームページの撮影例と星の見え方が違って、どれが T CrB かわからない!」ということが発生すると思います。そんなときは慌てず、以下の星図(図5)を使って、T CrB がどこに写っているのかを同定してみましょう。このとき、Seestar の場合はアプリの “Mark (マーク)” ボタンを押すと図3のように IC4587 の位置マークが出てくるので、同定がしやすくなります。なお、当然かんむり座が南中に近いときは、画像の上がほぼ北になります。



以下、Seestar S50, S30, S30 Pro で撮った場合 (図6) と、DWARF3, DWARF mini (図7)で撮った場合の比較画像となります。ご参考まで:


同定のための支援ツール
標準の経緯台モードで撮る場合は、下記のWebページ「Seestar/Dwarf 観測星図ツク朗 β版」から比較用の星図 (ファインディング・チャート) を作って、見比べると良いです。使い方は以下のとおり (ピンク色の番号順に従って、下記のとおり操作してみてください。少し詳しめの使い方は製作者の blog 参照):

- 天体名 “T CrB” と入力し、検索ボタンを押す (座標情報が RA, Dec ボックスに自動反映)。
- 経緯台モードの場合は”地平座標”、赤道儀モードの場合は”赤道座標”を選択。
- 視野の大きさを設定。概ね3.5度あれば良いです。もし拡大したいときは数字を小さくすると良い。なおSeestar S30 Pro は視野が広いので5.0度で設定。
- 地平座標の描画は観測地の緯度経度も必要なので、ボタンを押して自動取得してください。(※もし動作しない場合は、お使いのブラウザの位置情報取得がオフになっているはずです。ググるかAIに聞くなどして解決しましょう。手入力も可。)
- 地平座標の描画は観測日時も重要です。観測画像の日付と時刻をだいたいで良いので設定。
- お使いのスマート望遠鏡の機種名を選ぶ。
- UCAC4 + BSC 取得 (VSX を重ねるにチェックを入れた状態で) というボタンを押すと星図が描かれる。
いざ撮影してみよう!
T CrB の導入ができたら、撮影(ライブスタック)を開始しましょう。このとき、視野のなるべく中央付近に IC4587 又は T CrB があることを確認しておいてください。もしフォーカスがずれていそうであれば、オートフォーカス機能を一度ご使用ください(少しくらいピンボケでも測光には使えます)。露光時間やスタック枚数については以下を目安にしてください:
■ 露出時間
■ スタック枚数は数枚~10数枚(計1分程度でOK)
■ 念のため2~3セット撮影
■ LP フィルター (光害カット / Duo-band) は絶対に使わない
■ S30, S50 は4K撮影は絶対に使わない
■ S30 Pro は4Kで撮影
■ 露出時間10秒
■ ゲイン40
■ スタック枚数は数枚~10数枚(計1分程度でOK)
■ 念のため2~3セット撮影
■ ”天文” フィルターを必ず使う
■ DWARF3 は4Kで撮影
■ (なるべく適切な温度のダークフレームを使うこと)
たったこれだけで、観測は終了です。ただ時々、人工衛星、飛行機、雲の通過、突発的なノイズなど、予期せぬ観測トラブルが起こることもあるので、一晩の観測データは念のため2~3セットあると安心です(観測報告は1日1点で大丈夫です)。
なお Seestar はオプション機能で露出時間を2秒、5秒、10秒、20秒、30秒に変更可能ですが、T CrB の観測では10秒5秒で撮影してください。※Seestar は2025年8月のアップデートに伴い(特にS50, S30)、カウント値の記録方法が変わってしまい (ゲイン又はオフセットが内部処理で可変式になっている)、8~10等の星について、時々飽和する事例が確認されるようになりました。ただし、この(測光観測をする上で)厄介な仕様は、S30 Pro には発現していないことを確認しています(2026/05/15時点)。
【ポイント2】薄明と観測高度について
星の明るさを測る「測光」において、薄明時に撮影されたデータはどうしてもばらつきが大きくなる原因になったりします。さらに、観測高度が低いと大気の影響を強く受け、星の光量が落ちたり、星の色が赤くなったり等、正確に測定できない要因になってきます。そのため、もし可能であるなら、観測は薄明の影響が無いとき、加えて T CrB が高度30度以上のときに観測することが望ましいでしょう。
しかし!T CrB の爆発前の監視においては、この観測条件が第一発見を逃す原因になることも十分考えられます。そうなっては勿体ないので、爆発前の監視については例え薄雲ごしでも(多少乱暴な観測条件だったとしても)、T CrB に異常が無いかを確かめることは重要な意味を持ちます。
一方で T CrB は爆発後の観測データも重要です。どのような明るさの変化をするのか、観測をして記録を残す。これぞ天文学の醍醐味です。爆発後のデータについては、なるべく正確な記録を残すことが求められるので、先に触れた薄明の影響や高度30度以上での観測については、可能な限り意識して観測に望まれると良いでしょう。
【専門的な参考資料】
『標準測光システムへの等級変換のための一つの実用的なアプローチ』(PDF)
David Boyd (著), 大島修 (翻訳)
【爆発後の観測について】
本キャンペーンは Seestar S50 というスマート望遠鏡での観測を前提としています。この望遠鏡は明るい星は8等くらいまでが限界で、それ以上明るいと飽和してしまいます(測定できなくなる)。これを回避する手法として、ピントをぼかす方法がありますが、これでも3~4等までしか測れません。極大付近(2~3等)の明るさを Seestar で測るにはどうすれば良いのか、現在試行錯誤中です。
【追記 (2026/05/15)】
現在 Seestar S50, S30 については(爆発時の対策として)、赤道儀モードとピンボケ観測で対処できそうなことがわかっています。加えて、DWARFシリーズとSeestar S30 Pro は広角撮影が可能なため、爆発時は広角撮影で測光すれば対応できそうなことがわかっています。どちらにせよ、爆発時の観測マニュアルの整備を行う予定です。


